熱処理工程が話題になることはあまりありませんが、パワーデバイス、センサー、特殊 CMOS のプロセスフローはここに支えられています。ゲート酸化膜とフィールド酸化膜、ドーパントのドライブイン、緻密化アニール、LPCVD のポリシリコンと窒化膜。工場の増設やラインの再構築のたびに炉の選定が戻ってきて、そのたびに縦型か横型かという問いが付いてきます。
物理としては、どちらのアーキテクチャも同じことをしています。違いが出るのは、均一性の成り立ち、汚染の挙動、床面積の経済性、そして自動化です。当社が使っているフレームワークを示します。
それぞれが有利に立つ領域
縦型炉が現在の新規導入で主流なのは、量が増えるほど効いてくる理由が重なっているためです。
- ロード全体の均一性。 ウェーハは水平姿勢で、縦方向に積まれたボートに載ります。重力が対称に働き、回転対称なロードを前提としてガスフローを設計できます。大口径ウェーハでの温度・膜厚均一性は一般に有利になります。
- 汚染と雰囲気制御。 縦型のチューブは開口が小さく、シールしやすい構成です。ロードロックや不活性雰囲気のオプションも自然に成立します。デバイスの感度が上がるほど、ここが効いてきます。
- 自動化。 縦型プラットフォームはカセットや FOUP の搬送、工場自動化とすっきり統合できます。200 mm 以上では事実上の標準です。
- 設置面積。 処理ウェーハ 1 枚あたりの床面積は、通常こちらが優れます。
横型炉にも、条件次第では本物の優位が残ります。
- 初期投資と構成の単純さ。 小口径ウェーハ、研究開発ライン、自動化度の低い環境では、チューブを積み上げた横型構成が経済的で、限られた設備インフラでも維持できます。
- 少量バッチと研究用途での柔軟性。 ローディングが直接的で、ボート・チューブ・プロセスの入れ替えが容易です。複数のユーザーが使うラボに向きます。
- 既存プロセスの継続性。 横型で認定済みのプロセスが走っているラインでは、アーキテクチャを変えれば再認定のコストが発生します。これだけで判断が決まることもあります。
判断を決める入力条件
アーキテクチャはアプリケーションに従います。まず以下を固めてください。
- ウェーハサイズとロードマップ。 150 mm なら選択肢は開いています。200 mm 以上では、自動化と均一性が強く縦型に寄せます。装置の寿命のうちに 150→200 mm への移行があり得るなら、移行後を見据えて買うべきです。
- レシピの構成。 実際の工程を並べてください——酸化(ドライ/ウェット)、ドライブイン、アニール、LPCVD の各膜——温度と時間つきで。炉の台数は単一プロセスではなく、レシピのポートフォリオに対して決まります。
- デバイスの感度。 金属汚染と水分に対する要求が、必須となる雰囲気制御機能を決めます。そしてその機能は、アーキテクチャと結びついています。
- スループットの試算。 バッチサイズ × サイクルタイムを、実際のロット到着パターンに突き合わせます。大きすぎるバッチを半分の充填率で回せば、バッチ処理を選んだ根拠であるコスト優位は消えます。
- 建屋の実情。 天井高、床荷重、ガスと除害設備の手当て、そして実際に自社工場で動いている自動化の水準です。
決め手になる評価データ
アーキテクチャによらず、候補すべてに同じ証拠を求めてください。
- 実プロセス温度における、フルロード状態での温度均一性。空チューブのプロファイルではありません。
- 酸化・LPCVD については、ボート両端も含めたロード内のウェーハ間膜厚均一性。
- 熱バジェット内で実現できる昇降温レートと、ボート投入後の温度回復挙動。
- 実際の膜種・温度における、期間を明示したパーティクルデータ。
- デバイスのクラスに見合った金属汚染性能。
- 保全の実態。チューブとボートの交換周期、そしてそれぞれがダウンタイムとしていくらかかるか。
1 パスあたりコストを、正直に計算する
バッチ炉が存在する理由は経済性ですから、そこはきちんと計算します。償却した設備費+電力+ガス+消耗品(チューブ、ボート)+保全工数を、現実的な年間処理パス数で割ります。カタログの充填率ではなく、自社で見込める実際の充填率を使ってください。この数字を均一性データの隣に並べれば、アーキテクチャの判断はたいてい自ずと決まります。
ひとつだけ注意
炉の選定は長く尾を引きます。装置は、導入の根拠となった製品よりも長く生き残るのが普通です。レシピの柔軟性とアップグレード経路には、それに見合った重みをつけてください。今年のプロセスにとって最も安い炉が、10 年単位で見ても最も安い炉とは限りません。
パワーデバイス、センサー、特殊プロセスのラインでバッチ熱処理能力を検討中ですか。レシピ構成についてお聞かせください。
